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【2001年新春】

    

 ジープが活躍した20世紀は終わりましたが、わが愛車は21世紀も元気で走ってくれると思っていた。ところが新年早々、ギヤの切れが目立って悪くなってきた。はじめはこちらが気合いをいれて運転しないからうまく入らないのだと思っていた。しかし、ローギアに関しては丁寧にシフトしてもほとんど入らなくなり、仕方なくセカンド発進で数日を過ご須ことになった。
 そのまま乗り続けるわけにもいかないので三菱の営業所へもちこむ。
「いやぁ、ギヤが入んなくなっちゃって。」といっても見ようともしない。
担当の整備士はパーマ頭の若ゾウ!。態度が悪いというよりもジープに触ったことがない感じなのだ。
「この手の車だと部品がないかもしれませんねぇ。」
「まずは見てみないとわからんのじゃないの?」
「・・・・。」
「それに数年前までは作っていたんだからね。」
「そうですねぇ・・・。」
「とにかく預けて帰るから。」なんとも頼りないやりとりでトボトボ帰途へ

それから1週間、2週間。何の連絡もなく「手をつけていないな!一発カマしておかなければ!」と電話する。一応やってはみたらしく「ミッションはイカれていないがクラッチらしい。」という話。コラムシフトの場合、ハンドルの部分からいくつものアームが伸びてミッションにつながっている。そのジョイント部にあるブッシュの劣化が、切れの悪い原因だというのだ。その部品は何百円しかしないものだし修理費は大してかからないだろう。それでギアの動きが良くなるのならまあ遅いのは我慢しようと思った。しかし一ヶ月も音沙汰ないので催促の電話をすると、来週には納車するとのこと。

 


【2月】

 

  

 よっしゃ〜、みんなで出かける九重スキーには間に合うぞ。九州のスキー場といっても阿蘇から九重にかけての連山では雪や道路凍結も少なくない。そう、雪道こそ四駆の出番。ボルボも行くらしいが、所詮2駆。なれないチェーンつけでもたつくことは明白。そう思うやエンドの拡大を中止してタイヤ屋に電話。「お客様の車は2トントラックだと思いますが、その手のスタッドレスは入荷に少し日数が・・・」車の修理完了予定日とスキーの日が間2日しかない。もし修理が間に合わなければスタッドレスは何もならない。三菱で相談すると車が仕上がってすぐチェーンを注文すれば、スキーには間に合うということで、今回はその線でということに決定。考えてみるとあのジープにスタッドレスを履かせても、何だか老人が流行のナイキのシューズを履いてるみたい。タイヤチェーンがあの車には似合うんだ・・・と納得。

 しかし、残念ながらジープは雪道を走れなかった。ブッシュ7つを交換し、シフトチェンジのガタはなくなり、エンジンをかけない状態での操作はうまくいくようになったのだが、エンジンをかけると重くてつながらない。今度はマスターシリンダーが悪いのだろうということになった。そのマスターのインナーを交換するということだが部品がない。熊本三菱でも小さい部品は分かる人が少なく、パーツの冊誌を本社から取り寄せてインナーを捜してくれたが「在庫なし!どうしましょうか」との電話。どうしましようかとこちらに聞かれても!!。電話の声がだんだん荒くなってくる。どうにもならないのか?その日は雨、昼までの診療も早めに終了。もう完全な状態にはなり得ないのかと思うと無性に車に会いたくなって、連絡せず営業所へ。係りには声もかけずドックに行ったが車の姿は見えない。外を見渡すと冷たい雨の中に佇むジープが。なんだか弱りきった老人のようだった。ドアは開いていたので中に入り、キイひねってみようかと思いながらもハンドルすら触れることもなく、ボーと長いすにすわったまま。室内のにおいがひどく懐かしく感じられた。



【ホスピス】

  

  

 なんとか部品が手に入るという連絡が入ったのはそれから数日後のこと。車を買った北九州のジープ屋さんからの連絡である。ヨッシャー!やっと帰ってくるぞ、あのジープのジイちゃんが!。
KDMの掲示板にもわがジープのことがちょくちょく話題なっている。今回の長期入院に対する富永氏の発言。「三菱病院は病院ではなくホスピスです。だからもうジイちゃんは帰ってきません。」
 あれを目にしたときは一発やられたと悔しかったが、今週元気に帰って来たときは何と書き込もうか・・。タイトルは「完全復活・・・」いやいや「蘇る不死鳥」いやこんなのありきたり・・・。
そんな時また三菱から電話。インナーは届くことになっているのだが、セットする前にペーパーをかけて磨かなければならない。そのかけ方が難しいようなので先方にそこまで仕上げて送ってもらいます。やはりこの手のアナログ車になればたた部品を交換すればOKというのではなく、交換部品の調整に微妙なサジ加減が仕上がりを左右するのだろう。金子のおやじの言うミニマム治療法だ。それにしても今週末は晴れてドライブ間違いなし。有明海が見渡せる2000坪の土地を手に入れ、パワーシャベルで開墾している友人のところへでもいってみようか。そろそろ春、みかんやりんごなどの苗木を植えて行くのだ。勿論ジープでなきゃ似合わない。ジープでガンガン登るんだ!!。

 


【エアー抜き】

 

  

  やっぱりこの車ダメかもしれない!。北九州のジープ屋と三菱とが何度も連絡し合って、犯人はマスターしかないということで、インナーを完璧に仕上げて送ってくた。しかし直らないのだ。今度は、インナー装着の仕方がまずく、エアーが入ってしまっているのかもしれないという。三菱に車を預けてもう2ヶ月、こちらの苛立ちを気にしてか、夜どんなに遅くなってもエアーを抜くということなので、診療が終わって三菱に陣中見舞いにでかけた。作業は3人がかり。クラッチをふんだり、放したりする人。マスターの方からオイルを入れる人。下にもぐってオイルを抜く人。お互いに声を掛け合いながら果 てしない作業が続く。しかしクラッチは踏み込んでもスカスカと軽く、やっぱりエアーが抜けていない。みんな頑張ってくれたんだし仕方がない。スタッフの人の苦労をねぎらいつつもここれまでの2ヶ月間何回裏切られたことか。もういい。
 帰り際にふと振り返ると灯りの下に衰弱したジープの姿。治療をやっても直らない病気。やっぱり年をとれば弱るのは当然。北九州に送って診てもらおうというのがその日の結論だった。
とにかく不治の病におかされたジープとのつき合いに疲れた。古い車は好きでなきゃ維持できないというけれど、やっぱり僕はジイちゃんをそこまで好きではないのだ。ジープマニアじゃないんだ。もうジープの事はしばらく考えまいと思った。

 

 


【3月】

 

  

 翌日、三菱から電話があり、エアーの抜き方が間違っていたのでまたやってみるとのこと。昼休み、応援にいく。やってる、やってる。昨日と同じように3人でやっている。頑張ってくれたのだが、やはりエアーが抜けない。エアーが入るところはないはずだ。パーマ頭の主治医がやっぱり交換したマスターが良くないんだ。そこしか原因はないはずだ」という。もう一度別 のマスターを送ってもらうというのだが、僕は多分ダメだろうと思っていた。運良く直れば幸いだが、もう期待はしないのだといいきかせていた。2日後に別 のマスターのインナーが届き、別の営業所で特別な機械でエアー抜きをやるという。今度は自信ありげな声だった。「夜遅くなりますが、修理の結果 報告の電話を入れます。」
 もう、どうでもいいや。また楽しい胸おどるような出来事もあるにちがいない。こんなポンコツ車につき合っていることなんて時間の無駄 ・・・。自分の気持ちがジープから離れていたころ三菱から電話。いつものせりふ「今日は何とかなると思います。」適当に相づちを打って電話を切る。
 ちょうど土曜で午後から特に予定もないので出向いてみると、見知らぬ 顔の指示のもと三菱のスタッフがジープをいじっている。指示しているのは三菱のOBで現在は四駆のガレージを開いている人らしい。三菱にとしては最後の切り札。これまでの作業記録をチェックし、不良と考えられた部品はすべて交換してもギヤが入らないのは、ガタをとるのには新品に交換するしかないと考えているからで、ガタをうめるものをさがし装着するほうが有効なのだという。一人の整備士が小走りで何かを持って来た。それは明らかにジープの部品ではない。鉄砲の弾のような形をしていた。それをクラッチの2つのパーツの間にはさみこんだ。なんと、なんと本当に直ってしまった。OBは誇らしげだったが、現役整備員と私は嬉しい反面 、何てこった!!。これまでの部品交換のどれが有効でどれが無意味だったのかすら全くわからないままの幕引きなので、めでたし、めでたしという気分ではなかった。でも現にちゃんと乗れるようになったわけだし、三菱の連中もホッとしていた。直った理由を僕も聞かなかったし、彼らも説明しようともしなかった。
 乗ってきた車をあずけてジープに乗りこむ。みんなが見送る中をキイをひねると一発でブォーンとうなった。ギアを1速へ。カチッと入った。運転を始めるとただただ嬉しかった。春の陽差しが四方いっぱいのウインドーから差し込み、元気になった車を車ともども喜んだ。10分少々で帰宅できる道を30分以上遠回りをして帰った。僕とジープの至福な一時だった。

 

 


今回の三菱病院の治療費及び入院代

・入院期間 2ヶ月半  
・技術料 ブッシュ交換、クラッチオイル交換、クラッチマスター交換 小計  11.054円
・部品代 リング1、ブーツ1、ブッシュ9、シート2 小計   2.280円
    合計  14.000円
(消費税666円)
 

 

この期間ある日は夜なべで作業し、作業場移動のため台車に乗せて移動し、
何十時間とこの車にかかわってくれてこの金額。
これこそまさに「プロジェクトX」・・・・・・・・オーナーの声
リコール問題とこれで三菱はつぶれた・・・・・・・・・外野の声

 


     

 

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