その日も、一緒にお使いに行こうと誘うみどりを無視して、キッチンの前のソファで寝たふりをしていたら、しばらくして寝室の方の半開きの窓がバタンと開いた。ハッとして振り向くと、いたのだ。
彼女が。
  まぎれもない彼女が、エメラルドのような目を燃えるように輝かせて、俺をじっと見つめている。俺はいちもくさんに彼女の所にすっ飛んで行った。

<やあ、こ、こんにちわ>
  つとめてさりげなく言ったつもりだが、口が思うように回らない。
彼女は、部屋には入らず、出て来いとでもいうように、ちょっと身を固くして窓辺に立っている。
俺は窓枠に前足をかけ、自分では結構いけてるつもりの小首をかしげたポーズで
<俺、シータス。日本から来たんだ。君は? なんて名前?>
とたずねた。

黒猫は、俺の言葉がちょっと分かりにくかったらしい。
フランス訛りの猫語で、
<ジュ マペル カルメン。 カルメンっていうの>
と、答えた。おいおいまずいじゃないか。
俺はフランス語はからきしだめなんだ。
<あのさ、君、猫語は話せないのかい?>
<ウーン、話せるけど、猫語ってあまりシークじゃないから……>
と、シナをつくる。俺はもう頭にカッと血が上って、
<と、ともかく中にお入りよ>
と誘ってしまった。
<でも、私のママンが、よそのおうちに入っちゃいけないって>
<いいじゃないか。俺の他にはだれもいないしさ>
<あら、だったらよけいいけないわ。男性一人のお部屋に入るなんて。私、そんないいかげんな猫じゃないの>

  そう言いながらも、カルメンはしずしずと部屋に入って来ると、マネの”オランピア”のようなポーズで、みどりのベッドに寝そべった。
俺は、もう心臓が、口から飛び出してしまうかと思った。

  カルメンは黒猫だけれど、快傑ゾロの仮面みたいに、顔の上半分が黒く、下半分から胸にかけて白いフワフワの毛が生えている。
あとは、前足のつま先が、貴婦人の手袋のように白い。
尻尾がシュッと長く、アーモンド型の目は、エメラルドのように輝き、ほっそりした身体つき――特に、首から肩にかけての線がとびきり色っぽかった。


  俺はがらにもなく緊張しながら、イサカでみどりと出会い日本へ渡ったいきさつを語って聞かせた。
話を聞いているうちに、カルメンのエメラルドの瞳が輝きを増したようだった。
<まあ、あなたって、すごく国際的なのね。私、外国の猫なんて初めて。それも、エタズュニ(アメリカ)やジャポンの猫なんて……>
と、うっとりしている。
どうやら書類選考はパスしたらしい。

  続いて彼女の自己紹介が聞かせてもらえるのだろうと思っていたら、結構簡潔なものだった。
<あたしは、生まれも育ちもパリの16区(パリでも高級住宅の多い地区)。この1階のマダム・モーナンがあたしのママンなの>
<エッ! だって、まさか人間の子供じゃなく、本当のお母さんがいるんだろ?>
びっくりしてたずねる俺に、カルメンはちょっと嫌な顔をしたが、
<ああ、あたしを生んだママンは亡くなったわ。悲しくなるから、両親の話はしないことにしているの>
と答えた。
俺だって、戸籍調べをするつもりなんかない。
カルメンの手をとると、肩を抱き、優しく顔をなめた。
カルメンはうっとりとなすがままにされている。

  テレビでも、最高の場面でコマーシャルに切り替わってしまうように、そこでドアに鍵が差し込まれる音がした。
みどりが帰って来たのだ。
ピクンと跳び起きて窓に駆け寄るカルメン。
<大丈夫、俺のみどりは君をいじめたり追い出したりしないから>
しかしカルメンは、
<アビアント また会いましょう>
と身を翻して出て行ってしまった。
みどりの帰宅がうれしくなかったのは、これが初めてだった。


  それからもカルメンは、みどりの留守を見計らったように、俺の元に通って来た。
情熱的で官能的なカルメンと俺は、寸暇を惜しんで愛し合った。
俺は完全にカルメンにのめり込んでいた。
ただ、ちょっと気になったのは、時々、カルメンの後を追うように、薄汚いショウガ色の猫が、窓の外から覗いていることだった。



  そうこうするうち、みどりにも転機が訪れた。
ある日、東京のおばちゃんの知り合いという人からみどりに電話があって、息子が1週間ほどパリに行くので、時間があったら案内してやってほしい。
言葉はだめだし、ヨーロッパは初めてなので、くれぐれもよろしくと言う。
みどりもその人を知っていたし、日本語に飢えていたこともあり、その息子とやらのアテンドを二つ返事で引き受けた。

  男がやって来た。
医者の卵ということだったが、パナマ帽を被り、麻のヨレヨレの白い上着、黒いワイシャツのはだけた胸からネックレスをのぞかせ、ピンと立てた小指に指輪をはめたいでたちは、まるで三流芸能人。
しかも、見るからに頭のかったるそうな、ヌボッとした男だった。
それでも言葉つきだけは、ムサシのようなお坊ちゃま系だ。

  名前は隆久といった。
みどりは、案内するにもホテルが近い方が便利だと、向かいのホテルに部屋をとってやり、シャルル・ド・ゴールまで迎えに出た。
早朝の便で到着した隆久は、ホテルでシャワーを浴びると、みどりの部屋にやって来た。
借りてきた猫のようにおずおずと入って来るなり、ポカンと口を開いて、部屋を見回す。
「へー、もっと古めかしい暗い部屋を想像していたんだけど、すごくモダンなんだ」
が、最初の言葉だった。
「あ、これがシータス君? かわいいね」

  よし。俺のこともちゃんと目に入っているようだ。
とたんに、俺の厳しい評価も点が甘くなる。
それから、手にさげていた大きな紙袋から、削り節の大パックを取り出し、俺に渡した。
「ママが、シータス君は、これが大好物らしいって言ってたから……」
と言う。――なるほど。
将を射んとするにはまず馬からって、あれだな――。
  「あら、ママったら、おばさまにそんなことまでお話したのかしら?」
「ええ。それからみどりさんには、これ」
と、削り節を除いた残りを袋ごと渡す。
中には、みどりの好物のオセンベイやインスタントラーメン、行き掛けに成田の免税店で買ったとおぼしきエルメスのスカーフにパシュミーナのショール。
みどりの喜びそうなものが、後から後から、まるでサンタクロースの袋みたいに出てくる。

「あらあら、こんなにたくさん。どうしましょう」
と言いながらも、みどりもまんざらではない。
これで第一関門通過。
――こやつ、見かけは冴えないが、なかなか女性心理を心得た遊び人ではなかろうか?――
というのが俺の感想だった。
それでも、これだけたくさん好物をもらっては、そう悪口も言えない。
なんていっても、義理と恩は忘れてはいけないって、おふくろに散々言われていたから。


  それに、これを受け取ったとたん、俺は、あのカルメンに思う存分削り節を食べさせる場面を思い描いてしまったのだ。
情けないことだが、俺はゴロゴロ喉を鳴らし、その男の足に頭をすり寄せた。
それにもうひとつ。
みどりがこの男の案内とやらで外出が多くなれば、俺はもっとカルメンと会うチャンスができる。
これも俺の計算だった。

  案の定、おみやげに気をよくしたのか、よほど日本人が懐かしかったのか、一息入れるとすぐ、二人で出かけて行った。
みどりは次の日から、午前中の授業が終わると急いで帰って来て、向かいのホテルにいるこの男を連れて見物に出掛ける日が続いた。
どこを案内しているのかは興味ない。
だって俺はもう、名所という名所は一通り見てしまっていたから。
どこへでも行ってくれ。

  それに夜も、みどりは奴と一緒に食事に出掛ける。
なにしろ、フランスというところは結構不便な国で、女同士、男同士だけで夜、食事をしていると、まず、レズかホモだと思われてしまうのだ。
なんとでも思えというのならそれまでだが……。
それに、ちょっと格式のあるレストランだと、女二人なんて客は、体よく断られるか、入れてもらえても末席に押し込められるのが関の山。
だから、相手が嫌な野郎でない限り、多少不細工でも、役者不足でも、一緒に食事に出掛ける男がいるのは重宝に違いなかった。


  毎晩、みどりはごきげんで帰って来た。
「シータス、前々から行きたいと思っていたグラン・ヴフールへ行ってきたのよ。すごくエレガントでおいしかった。それに、明日の夜は、エッフェル塔見物のついでに、あの上のジュール・ヴェルヌでお食事」
――はいはい、どこへでも行ってください―― 俺は興味なさそうにニャーンと言って目をつぶった。
実は今夜、俺もカルメンと二人で腹一杯削り節を食べたんだ。

  みどりが出掛けて間もなく、カルメンが窓から入ってくると俺は、
<今日は、君に食べさせたいものがあるんだ。絶対食べたことのないもの>
と、戸棚から削り節の袋を引っ張り出した。
クチャクチャクチャ。袋の端を噛みちぎる。
それから鰹節のフレークを少しばかり俺の皿に出してやると、不思議そうにクンクン臭いをかいでいたカルメンは言った。
<お魚ね。ポワソン・フュメかしら?>
<燻製は燻製だけど、ただのスモークじゃない。まずは一口食べてごらん>
カルメンは、恐る恐る小さなフレークを口に含んだ。
<アー セ デリシュ! なんておいしいの>
と、目をつぶる。

<ね、おいしいだろ? さあ、全部食べちゃっていいんだよ。この間日本からきたお客が、わざわざ俺にって持って来たんだ。だけど、俺はもう、ちょっと飽きちゃってさ>
と、格好をつけてみせる。
本当は、口の中はよだれで一杯だったのに。
ともかく、美女がうまそうにものを食べるところって、ものすごくセクシーだってことを初めて知った。
そんな訳で、俺はみどりの帰りが遅くても、あまり遊んでくれなくても、一向に気にならなかった。



  1週間は瞬く間に過ぎ、隆久が帰る日が近づいた。
みどりが隆久のことをしゃべったのだろう。
世話好きのフランソワーズが、最後の晩、二人を夕食に招いてくれた。
今回は俺にはお呼びがかからなかったが……。

  ともかく、二人はそろって、フランソワーズの好きなカサブランカの花束を抱え、いそいそと出掛けていった。
もっとも、隆久の方はその招待の価値も分からず、しかたなくついて行ったという感じだったが。

  フランソワーズの夫は、フランスでも有名な国際政治評論家で、大統領だって、時には彼の意見を聞きに電話してくるってくらいの大物なのだ。
それに、食べ物にかけても無類のグルメ。
彼が食べたことのないものなんて、この世に存在しない。
その夫に百点満点をもらっているフランソワーズの手料理が食べられて、ご主人の話が聞けるのだから、彼らの家に招かれたがっている人はごまんといるのだ。

  俺だって、いつかみどりと一緒に彼の家でご主人の話を聞いたとき、猫に関しても、その発生の歴史から、猫がからんだ事件や椿事の数々と、べらぼうに幅広い知識を披露されて、すっかりファンになってしまったのだった。
だから、あの二人も、きっと、すごく楽しい晩を過ごすのだろうと思った。

  ところが帰って来たみどりは、なんとなくしょんぼりしている。
一体なにがあったのだろうと、俺は不思議だった。
次の日、隆久を空港まで送り届けて戻って来たみどりが、俺にポツリと言った。
「シーちゃん、あまりお利口じゃない人って、楽なようで骨が折れるわね」
俺は、はっきりは分からなかったが、みどりの言わんとしていることがなんとなく分かったような気がした。


  それから1時間もしないうちにフランソワーズから電話がかかった。
じっくり話がしたいから、みどりの下宿に来ると言う。
そして予告どおり、フランソワーズは竜巻のような勢いでやって来た。

ドアを背後で閉めるなり、
「みどり、あのボーイとはどういう友達なの?」
ほら質問だ。
「どうって……。ママの知り合いの息子で、パリが初めてだから、案内してって頼まれたんです」
「それで、彼はあなたが気に入ったんでしょ? それは見ていてよく分かったわ。で、彼、あなたに何か申し込んだ? そして、あなたは彼をどう思ったの?」
「うーん、あまり魅力的じゃないけど、いい人かなって……。それに、彼、これからも付き合ってほしいって、それは熱心に言うので、それもいいかと……」
「まあ、悪い人でないことは私にも分かったわ。だけどみどり、彼がうちにみえたときの態度、あなたも気がついたと思うけど、一体あれ、なに? 私は、あんな最低なお客様、初めて」
「ごめんなさい。でも、言葉が分からないから……」
「いいえ、言葉の問題じゃないと思うわ。言葉だけなら、主人が一生懸命、彼の興味のありそうな、医学的な話をしているとき、せめて主人の顔を見るか、分かろうと努力している様子を見せようとすると思うの。でも、彼ときたら、天井を見上げたり、部屋を見回したり、主人のことは完全に無視していた」

「ええ、実は私もそれで、何度もテーブルの下で足を蹴って合図したんですけれど……」
「それでも気がつかなかったの? オーララ!」
「多分、おばちゃまのお家があんまりすてきだから、見とれていたんでしょう」
「ばか言っちゃいけないわ。あの子は、自分が主役でないとおもしろくなくなる、甘やかされた自己中心的な人間なのよ。主人も、かわいいみどりが、あんな青年と一緒になるようなことになったら、とても残念だって言っていた。  あなたも知っているとおり、うちの主人は他人の悪口なんて、めったに言わない人なのに。みどり、誤解しないでね。私は子供がいないから、あなたを本当の娘のように大切に思っているの。あなたのママからも電話があって、彼は、自分が差し向けたわけじゃないから、ぜひ、あなたの本当の意見をみどりに話してやってちょうだいって頼まれたから、はっきり言っているのよ」

  フランソワーズはいつになく厳しかった。
みどりはうつむいてじっと話を聞いていたが、ひとこと、
「よく考えてみます。決して軽はずみはしませんから。ありがとうございました」
と、言った。

  その晩遅く、みどりは東京に電話をかけた。
寝入りばなを起こされたおばちゃんは、最初ぼんやりしていたらしいが、隆久の件だと聞いて、眠気も吹っ飛んだらしかった。
  今度の一件は、すべて隆久の母親のお膳立てだったという。
おばちゃんとしては、派手で遊び好きな隆久の性格が不安だったし、あの家の雰囲気が自分たちと合うとも思えなかったので、乗り気ではなかったところへ、昨晩遅くフランソワーズから報告が入って困っていたのだそうだ。
電話を切ったみどりは、暗い顔でじっと考え込んでいた。
しかし次の日、まだみどりがベッドにいるときに、隆久から無事成田に着いたと電話が入ると、顔を輝かせ、だいぶ長い間話し込んでいた。
俺は、これは面倒なことになりそうだと直感したのだった。



  隆久から、毎日電話がかかる。
昼となく、夜となく。
まあ、当直なんてのもあるらしいし、サラリーマンみたいに勤務時間が定まっていないから、仕方ないのかもしれないが、真夜中だろうと、早朝だろうとおかまいなしなのだ。
東京とパリの間には、夏は7時間の時差があるってことを知らないのだろうか? 
それでもみどりが、やれやれという顔をしながらも、嬉しそうに話しているのを見ると、どうやらだいぶ気に入っているらしい。
  といっても、俺みたいに、頭から真っ逆さまに恋に落ちているとも思えない。
だって、俺は食欲も減ってちょっと痩せたっていうのに、みどりは相変わらず友達と集まっては、おいしそうなものを作って楽しんでるし、週末は学校の連中と食べ歩きなんかに出掛けて、もっぱら食い気のほうだったからだ。


  ある日、カルメンがいやに太ったのに気づいた俺は、
<あれ、カルメン、ちょっと太ったかい? 鰹節はそんなにハイカロリーじゃないと思うけど>
と言うと、恥ずかしそうに、
<いやあね、あなたったら、気がつかないの?>
と言う。俺は何のことかさっぱり分からず、ポカンとしていると、
<全部あたしに言わせる気? ベべがいるのよ>
と言う。不覚にも俺は、
<どこに? と、辺りを見回してしまった>
<ウン、もう、いやっ。ほら、お腹の中よ>
と言う。
<お、俺の子?>
<そうに決まってるじゃないの>

  俺は驚いた。
いや、ものすごく嬉しいには嬉しかったが、と同時に本音は、ど、どうしよう? というところだった。

  現実問題として、みどりは俺とカルメンと、赤ん坊
――何匹入っているかは、出てきてからのお楽しみだ――
をみんな飼ってくれるだろうか?
――多分、無理だろう―― 
パリにいる間はともかく、東京に戻ったら、あの家にはムサシもいる。
片付け魔のおばちゃんとおじさんが、ウジャウジャ猫のいるのが好きなわけはない。

  かといって、俺だって自分が幼くして家族をなくしていたから、持てるものなら温かい家庭が欲しかった。
――だが待てよ、今だって温かい家庭はあるじゃないか。みどりとの家庭。みどりの家族との家庭――。
それにしても、カルメンに子供を産ませておいて、自分だけ日本に帰ってしまうなんて、許されることではない。
そこで初めて、みどりに何の断りもなしに、他に家庭を持ってしまった自分が、とんでもない裏切り者のように思えたのだった。


  みどりはみどりで、あの隆久との電話を切った後で、よく俺の顔をしげしげ眺めながら
「シーちゃん、彼、早く日本に帰ってほしいって、電話のたびに言うの。困っちゃったわね、どうしよう。まだ何の決心もついていないのに……。  だって、たった1週間一緒に過ごしただけでしょ……。でも確かに付き合ってみなくちゃ、どんな人か分かるわけないし……」

  と言うようになった。
どんどん心が傾いてきている証拠だ。
ってことは、俺と二人の生活を、終わりにしようってことじゃないか。
まあ、どんなことがあっても、俺を捨ててお嫁に行ってしまうなんてことはありっこないと思っていたけれど……。

  俺は悩んだ。
みどりをとるか、カルメンをとるか……。
  そんな俺の迷いを見透かしたように、カルメンが俺を訪ねてくる回数がめっきり減った。
気分がよくないのだろうか? 
それとも彼女の飼い主が、身重の彼女を表に出してくれなくなったのだろうか?

  俺のほうから訪ねて行きたいのは山々だったが、よその猫が訪ねて来ることは薄々感づいて、黙認していてくれるみどりも、俺が勝手に外を歩き回ることは許してくれない。
「あなたは迷子になるに決まってるから」
というのが理由だった。俺は正直、あまり方向感覚のいいほうじゃない。
だから、おふくろがケガしたとき、おやじを探しに出たまま家に帰れなくなっちゃったんだし。
あれを思い出すと、外を歩き回るのが恐ろしかった。

  たまに顔を見せたカルメンに、どうしてもっと来てくれないのかとなじっても、
<だって、そう調子のいい日ばかりじゃないのよ。このごろ>
と、悲しそうな顔をされると、訪ねて行ってやれない自分がとてもふがいない男のような気がする。
そこである日、思い切って、みどりが出掛けたのを見済まして、冒険の旅――といっても、たかだか、5階からレッドショセに降りるだけなのだが――に出た。
to be continued

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